な域を脱するために努力をするよりもむしろ、飢え死にか渇《かわ》き死にかする方を好むほどだった。そして齷齪《あくせく》と生活してる人々の悪口を言いながら、自分の懶惰《らんだ》を慰めていた。その多少重々しい皮肉な冗談は、人を笑わせずにはおかなかった。彼は仲間の者らよりずっと放胆で、地位ある人々をけなすのを――さすがに目配せや略語をもっておずおずとではあったが――はばからなかった。音楽の方面では、世の定説に少しも従わず、当代の偉人らがほしいままにしてる名声を、狡猾《こうかつ》に罵倒《ばとう》することもできた。女も彼からさらに容赦されなかった。ある女ぎらいな僧侶の古い言葉で、クリストフがだれよりもよくその辛辣《しんらつ》さを味わい得た一句を、彼は好んで冗談にもち出していた。
 ――女は霊の死滅なり[#「女は霊の死滅なり」に傍点]。
 クリストフは今や憤懣《ふんまん》のうちにあって、フリーデマンと話をすると幾分の気晴しを見出した。彼はフリーデマンを批判し、その卑俗な嘲弄《ちょうろう》の精神を、いつも長く喜ぶことはできなかった。たえざる嘲笑と否定との調子は、やがては人を苛立《いらだ》たせるものとな
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