た。涙を流し、身を震わし、嫌悪《けんお》の念にむせびあげていた。彼女を、彼ら皆を、自分自身を、自分の身体を、自分の心を、嫌忌《けんき》していた。軽侮の暴風が彼のうちに荒れていた。その暴風は久しい前から準備されたものだった。低級な思想、卑しい妥協、また彼が数か月来住んでいた腐爛《ふらん》空粗な雰囲気《ふんいき》などにたいして、早晩反動が来るべきであった。しかし愛したい要求は、愛するものに幻をかけたい要求は、その危機をできるだけ遅らしていた。それがにわかに破裂した。その方がかえってよかった。空気と峻烈《しゅんれつ》な純潔との大風が、氷のごとき朔風《さくふう》が、毒気を吹き払った。嫌悪の情は一撃のもとに、アーダにたいする恋愛を滅ぼしてしまった。
アーダはその仕業《しわざ》によって、クリストフにたいする支配権をいっそう強固にうち建て得ると信じていたが、それはこんどもまた、愛してくれてる男にたいする粗雑な不理解を証明するばかりだった。けがれた心をつなぎ止める嫉妬《しっと》の情も、クリストフのような若い驕慢《きょうまん》な純潔な性情には、ただ反発させるだけだった。しかし彼がことに許し得なかったこ
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