ルンストは涙もろかったし、その場の効果に乗じないではおかなかった。そして皆が感情に駆られた。三人ともたがいに抱《だ》き合って泣いた。
クリストフは自分の室を与えた。寝床をあたためられ、病人はそこに寝かされたが、もう死にかけてるかと思われた。ルイザとクリストフとは、その枕頭《ちんとう》につき添って、交替に看護をした。医者、薬剤、室内の十分な火、特別の食物、などが必要だった。
その次にはまた、足から頭までの服装《みなり》を心配してやらなければならなかった。シャツ、靴《くつ》、服、すっかり新しくしてやらなければならなかった。エルンストはされるままに任していた。ルイザとクリストフとは、その費用を償うために、血の汗を流して働いた。二人はその当座非常に困窮していた。新たに家具を整えたし、住居は前と同様に不便でありながら借賃が高かったし、クリストフには弟子が減っていたし、費用はかさんでいた。辛うじてやりくりをしてるだけだった。二人はできるかぎりの手段を尽した。もちろんクリストフは、自分よりもよくエルンストを助け得るような身分にあるロドルフに、頼み込むこともできるはずだった。しかし彼はそうしたくな
前へ
次へ
全295ページ中254ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング