に合わなかったからである……。
しかし彼は十分も彼女と離れていれば、もうすっかり不快なことを忘れてしまうのだった。そして新しい希望と幻影とをいだいて、アーダのところへもどっていった。彼は彼女を愛していた。愛は不断の信仰の行為である。神が存在しようとすまいと、そんなことはほとんど構わない。信ずるから信ずるのだ。愛するから愛するのだ。多くの理由を要しない!……
クリストフがフォーゲル一家の者と喧嘩《けんか》してからは、その同じ家に住んでることができなくなったので、ルイザは余儀なく、息子《むすこ》と自分とのために他の住居を捜して引移った。
ある日、クリストフの末弟のエルンストが、ふいに家へ帰って来た。だいぶ前から消息不明になっていたのだった。何かをやるたびごとに、相次いで追い出されて、なんらの職をももっていなかった。財布は空《から》であり、健康は害されていた。それで彼は、いったん古巣へ立ちもどって、新たに出直すがいいと考えたのだった。
エルンストは、二人の兄とはどちらとも、仲が悪くなかった。二人からあまり敬重されてはいず、自分でもそれを知っていた。しかしそんなことはどうでもいいこと
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