る危険な場合にあっても、一種の楽しみをもって身をさらしていた。彼は自分のために散財してはいたが、また他人のためにも散財していた。人が悲しんでるのをたえることができなかった。途中で出会う貧しい人々にたいしては、自分の物を――また他人の物を――喜んでほどこしていた。それらのあらゆる父の美点が、今クリストフに見えてきた。彼はそれを誇張して眺めた。父を見誤ってたような心地がした。十分に父を愛していなかったことを、自らとがめた。生活にうち負かされた父の姿が、眼に映った。流れのままに押し流され、闘《たたか》うにはあまりに弱く、そして空しく失った生涯を嘆いている、その不幸な魂の声を、彼は耳に聞くような気がした。以前彼の胸をえぐる調子で言われた、あのいたわしい願いの言葉が聞えてきた。
「クリストフ、おれを馬鹿にするなよ!」
 そして彼は後悔の念にたえなかった。寝台の上に身を投げて、泣きながら死者の顔にくちづけした。彼は昔のようにくり返し言った。
「私のお父さん、私は馬鹿にしやしません。あなたを愛しています。許してください!」
 しかし訴える声は静まらないで、苦しげに言いつづけた。
「おれを馬鹿にするな
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