荘厳な表情をしてるメルキオルの最後の眠りを見守りながら、彼は死者の陰闇《いんあん》な安らかさが心にしみ込むのを感じた。幼い情熱は、あたかも発作の熱のように、消散してしまった。墳墓の冷やかな息吹《いぶ》きが、すべてを吹き去ってしまった。ミンナも、彼の矜《ほこ》りも、彼の恋愛も、ああ、いかにくだらないものであったか! この現実、唯一の現実、死、それに比べては、すべてはいかにつまらないものであったか! ついにはかくなり果てるのならば、あんなに苦しみ、あんなに欲求し、あんなにいらだったのも、なんの甲斐《かい》があったろう。
 彼は眠ってる父を眺めた。しみじみと限りない憐れみを感じた。父の親切や情愛の些細な行ないまで思い出した。メルキオルは多くの欠点をそなえてはいたが、悪人ではなかった。彼のうちには多くの善良さがあった。彼は家庭の者を愛していた。彼は正直であった。クラフト家通有の一徹な誠実さは、道徳と名誉との問題においてはなんら非難の余地がなかったし、社会の多くの人が罪とも認めないほどのごくわずかな道徳上の汚行をも決して仮借しなかったのであるが、彼もそれを多少そなえていた。彼は勇敢だった。いかな
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