あけぼの》の初光を受けて、最後の晴朗に終る。
カイエ・ド・ラ・キャンゼーヌの最初の版(一九〇四年二月――一九一二年十月)の各冊には、次の銘がつけられていた。それは昔、ゴチック式寺院では、脇間《わきま》の入口にすえられてる聖クリストフの像の、台石についていたものなのである。
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いかなる日もクリストフの顔を眺めよ、
その日|汝《なんじ》は悪しき死を死せざるべし。
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この銘は、著者のひそかな希願を表明したもので、ジャン・クリストフが著者にとってと同様に読者にとっても、苦難を通じてのよき伴侶《はんりょ》であり案内人であらんことを、祈ったものである。
苦難はあらゆる人々に到来した。そして全世界の各地から著者のもとに届いた反応を信じてよければ、著者の希願は空には終らなかった。著者は今日その希願を新たに繰返す。始まってしかもなかなか終りそうもないこの紛擾《ふんじょう》の時代においては、ことにいつにもましてクリストフが、ぜひとも生きそして愛するの喜びを鼓吹する強い忠実な友であらんことを!
一九二一年一月一日
[#地から2字上げ]パリーにて
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