十巻の区別だけを保存して、刊行された。これには一九三一年の日付の作者の長い緒言がついている。この緒言は、この作品の生成および内容について重要な解説を含んでいるが、回顧的気分で書かれたものであり、かつは、作品の読後でなければ充分に理解しがたい点をも含んでいるので、最後に訳出して添えることにした。そしてこの巻頭には、作品全体の見通しをつけるに便利なものとして、改訂版四冊の序言を以下に訳出しておく。

 われわれは「ジャン・クリストフ」のこの決定版のために、十冊版のそれとは異なった分類を採る。その十冊は三部に分かたれていた。
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一、ジャン・クリストフ
   一、曙《あけぼの》。二、朝。三、青年。四、反抗。
二、パリーにおけるジャン・クリストフ
   一、広場の市。二、アントアネット。三、家の中。
三、旅の終り
   一、女友だち。二、燃ゆる荊《いばら》。三、新らしき日。
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 われわれはここに、事柄の順位に代ゆるに、感情の順位をもってし――論理的な多少外的な順位に代ゆるに、雰囲気《ふんいき》および総体の縁故によって作品をまとめるところの、芸術的な内
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