ると、その山の霊が岩の中から答えました。
「俺だ」
 禿鷹はまたびっくりしました。そして、も一つ他の山にたずねてみようと思って、その方へ飛んでゆきました。
「もしもし、国中で一番高い山はどの山でしょうか」
「俺《おれ》だ」
 そこで禿鷹《はげたか》はなお迷いました。そして方々の山へ行ってはたずねましたが、どの山もみな国中で一番高いのは俺だというのです。
 さあ禿鷹は困ってしまいました。山自身に聞いてもわからないとすれば……。その時ふと彼は、山の神のことを思いつきました。国中の山の霊《れい》を支配してる山の神に聞けば、きっとわかるにちがいない。「だが……まてよ」と禿鷹は考えました。「国中で一番高い山に巣を作りたいなどと、明《あか》らさまに言えば、山の神は俺を生意気だと思って、教えてくれないかも知れない。これは一つだまかして聞く方がよさそうだ」
 彼は一人うなずいてから、山間《さんかん》の森の中に山の神を訪《おとず》れました。
「いつも御機嫌よろしゅうて、結構でございます」
 禿鷹が丁寧《ていねい》に御辞儀《おじぎ》をするのに、山の神は大様《おうよう》にうなずいてみせました。
「うむ そし
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