て[#「うむ そして」はママ]お前のような者がわしの所へ来たのは、何の用か」
「はい、私共は山の上に住んでおりますので、山については何一つ知らないことはありません。がただ一つ、国中でどれが一番高い山だか、それがわからないで困っております。私共にとっては、山は言わば自分の家でありまして、国中で一番高い山は、自分の家の一番|貴《とうと》い所でありますから、汚さないように大事にしたいと思っておりますが、さてどれが一番高い山だかわからないのです。山の霊に聞いたらわかるかと思って、一々たずねて廻りましたが、どの山の霊もひどくいばりやで、みんな自分が一番高い山だと申します。それで……」
「ああそのことで来たのか」と山の神は言いました。「山の霊《れい》達はみなそんなにいばっているのか。よろしい、わしがよく言いきかしておいてやる」
「はい、どうぞお願いいたします。そして……」
「いやもうよい。山の霊達にはすぐわしが言いきかしてやるから」
 禿鷹《はげたか》は初め、山の神から一番高い山を聞き出すつもりでしたが、話がそんなふうになって、とうとう聞きそびれてしまいました。けれども、山の霊達がいばりさえしなけ
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