上に立って、四方を見渡しますと、向こうの山の方がもっと高そうに思われますし、その山の上へ飛んでゆくと、また向こうにもっと高そうな山が見えます。そしてあちらこちらと、山から山へ飛び移ってるうちに、体が疲れてくるし、気持ちはいらいらしてくるし、どれが一番高い山だかさっぱりわからなくなりました。
「こんなじゃとてもわかりっこない。誰かに聞かなくちゃ駄目《だめ》だ。そこで、禿鷹《はげたか》のことなら俺達《おれたち》禿鷹が一番よく知ってるし、山のことなら山自身が一番よく知ってるはずだから……」
そう思いついて彼は、ある山のうえに飛んでいって、大きな岩の上にとまって、山の霊《れい》にたずねてみました。
「もしもし、ちょっとおたずねしますが、国中で一番高い山はどの山でしょうか」
すると、岩の中の方から大きな声がしました。
「俺だ」
禿鷹はびっくりしました。これが国中で一番高い山だったのかしら、と思ってあたりを見渡しますと、どうも向こうの山の方が高そうな気がします。それでなおも一つの山の霊に聞いてみたくなって、向こうの山へ飛んでゆきました。
「もしもし、国中で一番高い山はどの山でしょうか」
す
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