ふうに閉ざされてることは疑いない。彼がはいってきた鉄格子は偶然にもゆるんでいたが、しかし下水道の他の口がすべて閉ざされてることは明らかである。彼はただ牢獄《ろうごく》の中に逃げ込み得たに過ぎなかった。
万事終わりであった。ジャン・ヴァルジャンがなしてきたすべては徒労に帰した。神はそれを受け入れなかったのである。
かれらは二人とも、死の大きな暗い網に捕えられてしまった。そしてジャン・ヴァルジャンは、暗黒の中に震え動くまっ黒な網の糸の上に恐るべき蜘蛛《くも》が走り回るのを感じた。
彼は鉄格子に背を向け、やはり身動きもしないでいるマリユスのそばに、舗石《しきいし》の上に、すわるというよりもむしろ打ち倒れるように身を落とした。その頭は両膝《りょうひざ》の間にたれた。出口はない。それが苦悶の最後の一滴であった。
その深い重圧の苦しみのうちに、だれのことを彼は考えていたか。それは自分のことでもなく、またマリユスのことでもなかった。彼はコゼットのことを思っていたのである。
八 裂き取られたる上衣の一片
その喪心の最中に、一つの手が彼の肩に置かれ、一つの声が低く彼に話しかけた。
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