とあり
ジャン・ヴァルジャンは[#「ジャン・ヴァルジャンは」は底本では「ジャンヴァルジャンは」]再び進み出した。
けれども、崩壊孔の中に生命は落としてこなかったとするも、力はそこに落としてきたがようだった。極度の努力に彼は疲憊《ひはい》しつくしていた。今は身体に力がなくて、三、四歩進んでは息をつき、壁によりかかって休んだ。ある時は、マリユスの位置を変えるために段の所にすわらなければならなかった。そしてもう動けないかと思った。しかしたとい力はなくなっていたとするも、元気は消えうせていなかった。彼はまた立ち上がった。
彼はほとんど足早に絶望的に歩き出して、頭も上げず、息もろくにつかないで、百歩ばかり進んだ。すると突然壁にぶつかった。下水道の曲がり角《かど》に達し、頭を下げて歩いていたので、その壁に行き当たったのである。目を上げてみると、隧道《すいどう》の[#「隧道《すいどう》の」は底本では「隊道《すいどう》の」]先端に、前方の遠いごくはるかな彼方《かなた》に、一つの光が見えた。今度は前のように恐ろしい光ではなかった。それは楽しい白い光だった。日の光であった。
ジャン・ヴァルジャン
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