せり[#ここで割り注終わり])。一報告はつけ加えて言っている、「何かいっそう秘密なことの場合には、彼らはその場所でそれを伝え合いはしなかった。」しかし、前のようなことを公然と言った後で何を隠すべきものがあったかほとんど了解に苦しむところである。
 集合は時として時日が定まっていた。ある時には決して八人から十人までを越すことがなく、集まる者も常に同じ人であった。またある時には、だれでもはいることができ、部屋《へや》はいっぱいになって立っていなければならなかった。ある者は心酔と熱情とをもってやってき、ある者は仕事に出かける通り道[#「仕事に出かける通り道」に傍点]だからやってきた。革命の時と同じく、それらの居酒屋のうちには愛国主義の女らがいて、新しくやって来る者らを抱擁した。
 その他種々の意味深い事柄も現われていた。
 ひとりの男が酒場にはいってきて、酒を飲み、そして出てゆく時に言った、「おい御亭主[#「おい御亭主」に傍点]、代は革命が払ってくれるよ[#「代は革命が払ってくれるよ」に傍点]。」
 シャロンヌ街と向き合ったある酒場では、革命の役員らが選ばれた。投票は帽子の中に投ぜられた。

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