の労働者は言った、「俺は寝もしねえや[#「俺は寝もしねえや」に傍点]、夜分に弾薬をこしらえてるんだ[#「夜分に弾薬をこしらえてるんだ」に傍点]。」時には「りっぱな服装をした中流民らしい」者らがやってきて、「一座をまごつかせ」ながら、「命令でもするような」様子をして、頭立った者[#「頭立った者」に傍点]らに握手をして、また出て行った。彼らは決して十分間以上と留まってることはなかった。人々は意味深い言葉を低い声でかわした、「謀は熟し[#「謀は熟し」に傍点]、事は完備している[#「事は完備している」に傍点]。」そこに居合わしたひとりの者の言葉をそのまま借りて言えば、「そこにいるすべての者ががやがやつぶやいていた。」興奮は非常なもので、ある日などは、酒場のまんなかでひとりの労働者が叫んだ、「俺たちには武器がねえ[#「俺たちには武器がねえ」に傍点]。」仲間のひとりはそれに答えた、「兵士らは持ってる[#「兵士らは持ってる」に傍点]。」かくて知らず知らずにイタリー軍に対するナポレオンの宣言をまねていた([#ここから割り注]訳者注 ナポレオンの宣言の一句―兵士らよ汝らは何物も有せずしかも敵はすべてを有
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