数名の労働者らは、コット街で太刀打ちを教えてる撃剣の先生のうちに集まっていた。木刀や杖や棒や竹刀などでできてる武器の装飾がしてあった。ある日彼らはその竹刀の鋒球を皆取り払った。ひとりの労働者は言った、「俺たちは二十五人だ[#「俺たちは二十五人だ」に傍点]。だがだれも俺を[#「だがだれも俺を」に傍点]木偶《でく》だと思いやがって目にも止めてくれねえ[#「だと思いやがって目にも止めてくれねえ」に傍点]。」その木偶は後にケニセーとなって名を現わした。
 あらかじめ計画されてる事柄が、しだいに一種不思議な明らかな姿を取ってきた。戸口を掃除《そうじ》してたひとりの女が他の女に言った、「もうだいぶ前から一生懸命に弾薬が作られてるよ[#「もうだいぶ前から一生懸命に弾薬が作られてるよ」に傍点]。」また各県の国民軍に対する宣言が公然と大道で読まれていた。それらの宣言の一つには、酒商ブュルトー[#「酒商ブュルトー」に傍点]と署名してあった。
 ある日、ルノアール市場《いちば》の一軒の酒屋の門口で、濃い頤髯《あごひげ》のあるイタリー音調のひとりの男が、車除石の上に上って、神通力を発散してるかと思われるよう
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