男が答えた。
「それでもあの室に燈火《あかり》が見える。」
二人にはジャヴェルの声だとわかった。
その室は、扉《とびら》を開くとそれで右手の壁のすみが隠れるようになっていた。ジャン・ヴァルジャンは手燭の火を吹き消した、そしてそのすみにはいった。
サンプリス修道女はテーブルのそばにひざまずいた。
扉《とびら》は開かれた。
ジャヴェルがはいってきた。
数人の者のささやく声と、門番の婆さんの言い張る声とが、廊下に聞こえていた。
修道女は目をあげなかった。彼女は祈っていた。
蝋燭《ろうそく》は暖炉の上にあって、ごく淡い光を投げていた。
ジャヴェルは修道女を見て、茫然《ぼうぜん》と立ち止まった。
ジャヴェルの根本、彼の元素、彼の呼吸の中心、それはあらゆる権威に対する尊敬であったことは、読者の思い起こし得るところであろう。彼はまったく単一であって、何らの異論も制限も容《ゆる》さないのだった。もとより彼にとっては、宗教上の権威はすべての権威の第一なるものであった。彼はこの点について他のあらゆることについてと同じく、厳格で皮相的で正確だった。彼の目には、牧師は誤りをすることのない者
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