んに渡して下さい。」
 その紙は折り畳んであった。彼女はその上に目を落とした。
「読んでもよろしいです。」と彼は言った。
 彼女は読んだ。「ここに残してゆくいっさいのものを御監理下さるよう司祭殿に御願い申し候。そのうちより、訴訟費用および今日死去せる婦人の埋葬費御支払い下さるべく候。残余のものは貧しき人々へ御施し下されたく候。」
 修道女は何か言おうとした。しかしかろうじて不明な音を少しつぶやき得たばかりだった。それでもついに彼女はこれだけ言うことができた。
「市長様は、最後にも一度あのかわいそうな女《ひと》を見ておやりになりたくはございませんか。」
「いや、」と彼は言った、「私は追跡されています。その室で捕《つか》まるばかりです。そうなるとかえってあの女の霊を乱すでしょう。」
 彼がそう言い終わるか終わらぬうちに、大きな物音が階段にした。二人は階段を上がって来る騒々しい足音を聞いた。そしてまた、できるだけ高い鋭い声で門番の婆さんの言うのが聞えた。
「あなた、私は誓って申します、昼間も晩もだれ一人ここへははいりませんでした、それに私は一度も門から離れたこともなかったのです。」
 一人の
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