つくようにしておいた。彼は戸棚から自分の古いシャツを引き出して、それを引き裂いた。そして幾つかの布片を作って、その中に二つの銀の燭台を包み込んだ。彼は別に急いでもそわそわしてもいなかった。司教の燭台を包みながら、黒パンの一片をかじった。たぶんそれは、脱走しながら携えてきた監獄のパンであったろう。
そのことは、警察からあとで捜索にきた時、室の床《ゆか》の上に見いだされたパンのくずによって確かめられた。
だれかが扉《とびら》を低く二つたたいた。
「おはいりなさい。」と彼は言った。
サンプリス修道女であった。
彼女は色青ざめ、両眼は赤くなり、持っていた蝋燭《ろうそく》は手のうちに揺らめいていた。運命の暴力は、いかに吾人《ごじん》が完成しておりあるいは冷静となっていても、吾人の臓腑《ぞうふ》の底より人間性を引き出し、それを外部に現わさせるだけの特性を持っているものである。その一日の感動のうちに、その修道女も再び一個の女性となっていた。彼女は泣いたのだった、そして今震えていた。
ジャン・ヴァルジャンは一枚の紙に数行したため終わって、それを修道女に差し出して言った。
「どうかこれを司祭さ
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