求むべきである。掘りつくすべきである。奥底まで行くべきである。真理を追い求め、地下を掘り穿《うが》ちてそれをつかまなければならない。その時真理は人に美妙なる喜びを与える。人は力強くなり、真に笑うことができる。私は確乎《かっこ》たる信念を持っている。司教さん、人間の不死というのは一つの狐火《きつねび》にすぎない。まことに結構な約束だ! それを信ずるもまたいいでしょう。アダムは結構な手形を持ったものだ。人は霊である、天使になるであろう、双肩に青い翼を持つであろうと。それからテルツリアヌスではないですか、幸福なる人々は星より星へ行くであろうと言ったのは。それもいいでしょう。人は星の蝗虫《ばった》になる。そしてそれから、神を見るであろう。アハハハ。それらの天国なるものは皆|囈語《たわごと》にすぎない。神というはばかばかしい怪物にすぎない。もちろん私はかかることを新聞雑誌の上で言いはしないが、ただ親友の間でささやくだけです。杯盤《インテル》の間《ポキュラ》にです。天のために地を犠牲にするのは、水に映った影を見て口の餌物《えもの》を放すようなものです。無限なるものから欺かるるほど愚かなことはない。
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