《ゆくえ》がわからないのである、」ということを告げた。それから彼は被告の方に向いて、自分がこれから言うことをよく聞くようにと注意し、そして言った。「その方はよく考えてみなければならない場合にあるのだぞ。きわめて重大な推定がその方の上にかかったのだ、そして最悪な結果をきたすかも知れないのだ。被告、その方のために本官は最後に今一度言ってやる。次の二つの点を明瞭《めいりょう》に説明してみよ。第一に、その方はピエロンの果樹園の壁を乗り越え枝を折り林檎《りんご》を盗んだか、否か。言い換えれば、侵入|窃盗《せっとう》の罪を犯したか、否か。第二に、その方は放免囚ジャン・ヴァルジャンであるか、否か。」
被告はそれをよく理解しかつ答うべきことを知ってるかのように、悠然《ゆうぜん》と頭を振った。彼は口を開き、裁判長の方を向き、そして言った。
「まず……。」
それから彼は自分の帽子を見、天井をながめ、それきり黙ってしまった。
「被告、」と検事は鋭い声で言った、「注意せい。その方は審問には何も答えない。その方の当惑を見ても罪は十分明らかだ。みな明瞭にわかっているのだぞ。その方はシャンマティユーという者では
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