の囚人。その一致したる恐るべき証言に対して、彼はいかなる反駁《はんばく》を有するか? 彼は単に否定する。いかなる頑強さぞ! 陪審員諸君、諸君はよろしく公平なる判断を下さるることと思う、云々《うんぬん》。――検事がかく語っている間、被告は多少感嘆を交じえた驚きをもって呆然《ぼうぜん》と口を開いて聞いていた。人間の力でよくもかく語り得るものだと彼は明らかに驚いたのである。時々、論告の最も「溌剌《はつらつ》」たる瞬間、自らおさえかねる能弁が華麗なる文句のうちにあふれ出て、被告を暴風雨のごとく包囲する瞬間には、彼は右から左へ左から右へとおもむろに頭を動かした。それは一種の悲しい無言の抗弁であって、彼は弁論の初めよりそれだけで自ら満足していたのである。彼の最も近くに立会ってる人々は、彼が二、三度口のなかで言うのを聞いた。「バルーさんに尋ねなかったからこんなことになるんだ!」――その愚昧《ぐまい》な態度を検事は陪審員らに注意した。それは明らかに故意にやっているもので、被告の痴鈍を示すものではなく、実に巧妙と狡猾《こうかつ》とを示すものであり、法廷を欺く常習性を示すものであり、被告の「根深い奸悪《か
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