。それは悲劇には無用なものであるが、常に法廷の雄弁には大なる貢献をなすものである。傍聴人や陪審員らは「震え上がった。」その描出がすんで彼は、翌朝のプレフェクチュール紙の大なる賛辞をかち得んための抑揚《よくよう》をもって言を進めた。――そして被告は実にかくのごとき人物である、云々。浮浪人であり、乞食《こじき》であり、生活の方法を有せぬ奴《やつ》である、云々。――被告は過去の生涯によって悪事になれ、入獄によっても少しもその性質が改まらなかったのである。プティー・ジェルヴェーに関する犯罪はそれを証して余りある、云々。――被告は不敵なる奴である。大道において、乗り越した壁より数歩の所において、盗める品物を手に持っていて、現行犯を押さえられ、しかもなおその現行犯を、窃盗《せっとう》を、侵入を、すべてを否認し、おのれの名前までも否認し、同一人なることまでも否認している。しかし吾人《ごじん》はここに一々持ち出さないが、幾多の証拠がある。それを外にしても四人の証人が認めている。すなわち、ジャヴェル、あの清廉なる警視ジャヴェル、および被告の昔の汚辱の仲間、ブルヴェー、シュニルディユー、コシュパイユの三人
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