「次の事件があるからです。もう開廷して二時間ほどになるでしょう。」
「次の事件というのはどういうのです。」
「なにそれも明瞭な事件です。一種の無頼漢で、再犯者で、徒刑囚で、それが窃盗を働いたのです。名前はよく覚えていません。人相の悪い奴です。人相からだけでも徒刑場にやっていい奴《やつ》です。」
「どうでしょう、」と彼は尋ねた、「法廷の方へはいる方法はないでしょうか。」
「どうもむずかしいでしょう。大変な人です。ですがただいま休憩中です。外に出た人もありますから、また初まったら一つ骨折ってごらんなさい。」
「どこからはいるのです。」
「この大きな戸口からです。」
 弁護士は向こうへ行った。二、三瞬間の間に彼は、あらゆる感情をほとんど同時にいっしょに感じた。その無関係な弁護士の言葉は、あるいは氷の針のごとくあるいは炎の刃のごとく、こもごも彼の心を刺し貫いた。まだ何も終結していないのを知った時、彼は息をついた。しかし彼が感じたのは満足の情であったか、あるいは苦悩の情であったか、彼自身も語ることはできなかったであろう。
 彼は幾多の群集に近寄って、その話に耳を傾けた。――法廷は事件が非常に
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