ヌが眠ってるものと思って、そっと室にはいってきて、爪先《つまさき》立って寝台に近寄った。彼は帷《とばり》を少し開いた、そして豆ランプの光でさしのぞくと、ファンティーヌの静かな大きい目が彼をじっと見ていた。
 彼女は彼に言った。「あなた、私のそばに小さな床をしいてあの子を寝かして下さいますわね。」
 医者は彼女の意識が乱れているのだと思った。彼女はつけ加えた。
「ごらんなすって下さい、ちょうどそれだけの場所はありますわ。」
 医者はサンプリス修道女をわきに呼んだ。修道女は事情を説明した。マドレーヌ氏は一日か二日不在である、病人は市長がモンフェルメイュに行かれたのだと信じているが、よくわからないので事実を明かさなければならないとも思えないし、また病人の察するところがあるいはかえって本当かも知れない。すると医者はそれに同意した。
 医者はまたファンティーヌの寝台に近寄っていった。彼女は言った。
「そうすれば私は、朝あの子が目をさましたらこんにちはと言ってやれますし、また晩に眠れない時は、子供の寝息が聞けますでしょう。そのやさしい小さな寝息をきくと、きっと心持ちがよくなりますわ。」
「手を貸し
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