こられません? なぜでしょう? でもあなた方にはわかってるはずです。今お二人で小声で話していらしたじゃありませんか。私にも知らして下さい。」
 雑仕婦は急いで修道女の耳にささやいた。「市会の御用中だとお答えなさいませ。」
 サンプリス修道女は軽く顔をあからめた。雑仕婦が勧めたことは一つの虚言であった。しかしまた一方においては、本当のことを言えば必ず病人に大きい打撃を与えるだろうし、ファンティーヌの今の容態では重大なことになりそうにも思えた。しかし彼女の赤面は長くは続かなかった。彼女は静かな悲しい目付きをファンティーヌの上に向けた。そして言った。
「市長さんはどこかへ出かけられました。」
 ファンティーヌは身を起こしてそこにすわった。その目は輝いてきた。異常な喜びがその痛ましい顔に輝いた。
「出かけられた!」と彼女は叫んだ。「コゼットを引き取りに行かれた!」
 そして彼女は両手を天に差し出した。その顔は名状し難い様を呈した。その脣《くちびる》は震えていた。彼女は低い声で祈りをささげたのだった。
 祈祷を終えて彼女は言った。「あなた、私はまた横になりたくなりました。これから何でもおっしゃる
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