。ただ門番の婆さんに今晩待っていないようにとだけ言ってゆかれた。
 サンプリス修道女は問い尋ね雑仕婦はいろいろ想像しながら、二人でファンティーヌの寝台に背を向けてひそひそささやいていた。その間、ファンティーヌは健康の自由な運動と死の恐るべき衰弱とを同時にきたすあの臓器病特有な熱発的元気で、寝床の上にひざまずき枕頭《まくらもと》に震える両手をついて、帷《とばり》の間から頭をつき出して聞いていた。そして突然彼女は叫んだ。
「あなた方はマドレーヌ様のことを話していらっしゃいますね! なぜそんな低い声をなさるの。あの人はどうなさったのです。なぜいらっしゃらないのです?」
 その声は荒々しく嗄《しわが》れていて、二人の女は男の声をきいたような気がした。二人はびっくりしてふり向いた。
「返事をして下さい!」とファンティーヌは叫んだ。
 雑仕婦はつぶやいた。
「門番のお婆さんの言葉では、今日はあの方はおいでになれないかも知れませんそうです。」
「まあ、あなた、」修道女は言った、「落ちついて、横になっていらっしゃいね。」
 ファンティーヌはなおそのままの姿勢で、おごそかな悲痛な調子で声高に言った。

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