聖母マリア様、
「いつかお前の願った小さな児、
それ私のヴェールの中に、」との御仰せ。
「町に行って布《きれ》求め、
指貫《ゆびぬき》と糸とを買っとくれ。」

美しいものを買いましょう
市外の通りを歩きつつ。

聖母様、リボンで飾った揺籃《ゆりかご》を
私は炉のもとに置きました。
神様の一番きれいな星よりも、
いただいた子供がかわいうございます。
「奥様この布《きれ》で何をこしらえましょう?」
「坊やに着物《おべべ》をこしらえておくれ。」

野菊は青く、薔薇《ばら》はまっかに、
野菊は青く、ほんにかわいい私の児。

「この布《きれ》洗っておくれ。」「どこで洗いましょう?」
「川の中でよ。痛めず汚《よご》さないでね、
美しい裾着《すそぎ》と下着をこしらえておくれ。
私はそれに刺繍《ししゅう》の花をいっぱいつけましょう。」
「赤ちゃんが見えませぬ。奥様何にいたしましょう?」
「それなら、私を葬る経帷子《きょうかたびら》にしておくれ。」

美しいものを買いましょう
市外の通りを歩きつつ。
野菊は青く、薔薇《ばら》はまっかに、
野菊は青く、ほんにかわいい私の児。
[#ここで字下げ終わり]

 
前へ 次へ
全639ページ中539ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング