ィーヌは起き上がって扉の方をながめた。そしてまた倒れた。
その心持ちは傍《はた》からよく察せられた。しかし彼女はだれの名も言わず、苦情も言わず、だれをも責めなかった。ただ痛ましげに咳《せき》をした。何か暗黒なものが彼女の上にかぶさってくるようだった。彼女はまっさおになり、脣《くちびる》は青くなっていた。時々は微笑《ほほえ》みをもらした。
五時が鳴った。その時サンプリス修道女は、彼女が低い声で静かに言うのを聞いた。「もう私は明日|逝《い》ってしまうのに、今日きて下さらないのはまちがってるわ。」
サンプリス修道女の方でも、マドレーヌ氏の遅いのに驚いていた。
その間にも、ファンティーヌは寝床から空をながめていた。彼女は何かを思い出そうと努めてるらしかった。そして突然、息のような弱い声で歌い出した。サンプリス修道女はそれに耳を傾けた。ファンティーヌが歌ったのは次のようなものだった。
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市外の通りを歩きつつ。
野菊は青く、薔薇《ばら》はまっかに、
野菊は青く、ほんにかわいい私の児。
昨日私の炉辺にいらせられた
刺繍《ししゅう》のマントの
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