。郵便馬車との衝突のために、車輪の輻《や》が二本折れ、轂《こしき》がゆがんで螺旋《ねじ》がきいていなかった。
「おい、この近くに車大工はいないか。」と彼は馬丁に言った。
「ありますとも。」
「連れてきてもらえまいかね。」
「すぐ向こうにおるですよ。おーい。ブールガイヤール親方!」
車大工のブールガイヤール親方は、戸口の所に立っていた。彼はやってきて車輪を調べたが、外科医が折れた足を診《み》る時のように顔をしかめた。
「すぐにこの車輪を直してもらうことができようか。」
「ええ旦那《だんな》。」
「いつ頃また出かけられるだろうね。」
「明日《あした》ですな。」
「明日!」
「十分一日は手間が取れますよ。旦那は急ぐんですか。」
「大変急ぐんだ。遅くも一時間したらまた出かけなくちゃならないんだ。」
「そいつあだめですぜ旦那。」
「いくらでも金は出すが。」
「だめです。」
「では、二時間したら?」
「今日中はだめです。二本の輻《や》と轂《こしき》とを直さなきゃあなりません。明日までは出かけられませんぜ。」
「明日までは待てない用なんだ。ではこの車輪を直さないで外のと取り換えたらどうだろう。」
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