「そんなこたあ……。」
「君は車大工だろう。」
「そうには違いねえんですが。」
「わしに売ってもいい車輪があるだろう。そうすればすぐに発《た》てるんだ。」
「余りの車輪ですか。」
「そうだ。」
「旦那《だんな》の馬車に合うような車輪はありません。二つずつ対《つい》になっていますからな。車輪をいい加減に二つ合わせようたってうまくいくもんじゃありません。」
「それなら、一対売ってくれたらいいだろう。」
「旦那、どの車輪でも同じ心棒に合うもんじゃありません。」
「が、まあやってみてくれないか。」
「むだですよ、旦那。私《わたし》ん所には荷車の車輪きり売るなあありません。なんにしてもここは田舎《いなか》のことですからな。」
「ではわしに貸してくれる馬車はないかね。」
親方は彼の馬車が貸し馬車なのを一目で見て取っていた。そして肩をそびやかした。
「貸し馬車をそんなに乱暴にされちゃあ! 私んところにあったにしろ旦那には貸せませんな。」
「では売ってくれないか。」
「無《ね》えんですよ。」
「なに、一つもない? わしはどんなんでも構わないんだが。」
「なにしろごく田舎《いなか》のことですからな。た
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