が短く、しかも胸が開き臀《しり》が大きく、脚《あし》はやせて細く、蹄《ひづめ》[#ルビの「ひづめ」は底本では「ひずめ」]は丈夫であった。姿はよくなかったが、頑丈《がんじょう》で強健だった。二時間に五里走って、背に一滴の汗も流していなかった。
 彼は馬車からおりなかった。ところが麦を持ってきた馬丁は急に身をかがめて、左の車輪を調べた。
「これでまだ遠方までいらっしゃるかね。」とその男は言った。
 彼はまだほとんど自分の瞑想《めいそう》のうちに沈んだまま答えた。
「なぜ?」
「遠くからいらっしゃったのかね。」と馬丁はまた言った。
「五里向こうから。」
「へえー。」
「へえーってどういうわけだ。」
 馬丁はまた身をかがめて、しばらく黙ったまま車輪を見ていたが、それから身を起こして言った。
「ですがね、これで五里の道を来るこたあできたろうが、これからはどうも半里とは行けませんぜ。」
 彼は馬車から飛びおりた。
「何だって?」
「なあに、旦那《だんな》も馬もよくまあ往来の溝《みぞ》にもころげ込まねえで、五里もこられたなあ不思議だ。まあ見てごらんなさるがいい。」
 なるほど車輪はひどくいたんでいた
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