近くにすわり、手にペンを持って、道路取り締まり違反の調書がのってる記録を開いて何か書き入れながら、それに目を据えていた。彼はジャヴェルがきてもそれをやめなかった。彼はあわれなファンティーヌのことを考え止めることができなかった、そして他のことに対して冷淡であるのは自然のことだった。
ジャヴェルは自分の方に背を向けてる市長にうやうやしく礼をした。が市長は彼の方へ目を向けないで、続けて記録に書き込んでいた。
ジャヴェルは室の中に二、三歩進んだ、そしてその静けさを破らずに無言のまま立ち止まった。
もし一人の人相家があって、ジャヴェルの性質に親しんでおり、この文明の奴僕たる蛮人、ローマ人とスパルタ人と僧侶と下士とのおかしなこの雑種人、一の虚言をもなし得ないこの間諜《かんちょう》、この純粋|無垢《むく》な探偵《たんてい》を、長い間研究しており、更にまたマドレーヌ氏に対する彼の昔からのひそかな反感や、ファンティーヌに関する彼と市長との争いなどを知っており、そしてこの瞬間における彼をよく見たとするならば、その人相家は「何が起こったのだろう」と思ったであろう。彼の正直で清澄でまじめで誠実で謹厳で猛
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