ファンティーヌの言葉どおりに次のような手紙を書き、それに彼女の署名をさした。

[#ここから2字下げ]
 テナルディエ殿
この人へコゼットを御渡し下されたく候。
種々の入費は皆支払うべく候。
謹《つつし》みて御|挨拶《あいさつ》申し上げ候。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]ファンティーヌ

 ちょうどその間に大事件が持ち上がった。人生が形造られてる不可思議なる石塊をいかによく刻まんとするもむだである、運命の黒き鉱脈は常にそこに現われて来る。

     二 ジャン変じてシャンとなる話

 ある朝マドレーヌ氏は書斎にいて、自らモンフェルメイュに旅する場合のために市長としての緊急な二、三の事務を前もって整理していた。その時警視のジャヴェルが何か申し上げたいことがあってきた旨が取りつがれた。その名前をきいてマドレーヌ氏はある不快な印象を自ら禁ずることができなかった。警察署でのあの事件以来、ジャヴェルは前よりもなおいっそう彼を避けていた。そして彼はジャヴェルの姿を少しも見かけなかったのである。
「通しておくれ。」と彼は言った。
 ジャヴェルははいってきた。
 マドレーヌ氏は暖炉の
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