彼女はそういう者らに往来でも出会い、家の階段でもまた出会った。彼女は幾晩も、泣き明かしまた考え明かした。目は妙に輝き、肩には左の肩胛骨《かいがらぼね》の上あたりに始終痛みを覚えた。咳も多くなった。彼女は深くマドレーヌさんを憎んだ、それでも少しも不平はもらさなかった。日に十七時間縫い物をした。しかし監獄の仕事請負人が、安く女囚徒らに仕事をさしたので、にわかにその仕事の賃金が少なくなって、普通の工女の一日分の賃金は九スーになってしまった。日に十七時間働いてしかも九スー! 債権者らはますます苛酷になった。古道具屋はほとんどすべての道具を取り戻したのだったが、なお絶えず言った、「いつになったら払おうというんだ、太《ふて》え女《あま》め。」いったい彼らは彼女をどうするつもりなのか! 彼女はいつも追いまわされてるような気がした。そしてしだいに彼女のうちには野獣のような何かが芽を出してきた。その頃またテナルディエからも手紙がきた。今まではあまりに気をよくして待っていたが、こんどはすぐ百フラン送るよう、さもなければ、あの大病から病み上がりの小さなコゼットをこの寒空に往来に追い出すばかりだ、そしたらどう
前へ
次へ
全639ページ中403ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング