ね。」
「おもに子供ですよ。」
「その病気で死ぬことがあるんでしょうか。」
「ずいぶんありますよ。」とマルグリットは言った。
ファンティーヌは室を出て行って、も一度階段の上で手紙を読んだ。
その晩彼女は出かけて行った。そして宿屋の多いパリー街の方へ歩いてゆくのが見られた。
翌朝マルグリットは夜明け前にファンティーヌの室へはいって行った。彼女らはいつもいっしょに仕事をして、二人で一本の蝋燭《ろうそく》ですましていたのである。見ると、ファンティーヌは青ざめて氷のようになって寝床の上にすわっていた。彼女は寝なかったのである。帽子は膝の上に落ちていた。一晩中ともされていた蝋燭は、もうほとんど燃え尽きていた。
マルグリットはその大変取り乱れた光景にあきれて、敷居《しきい》の上に立ち止まった、そして叫んだ。
「おお! 蝋燭が燃えてしまっている。何か起こったに違いない!」
それから彼女は、こちらへ髪のない頭を向けてるファンティーヌをながめた。
ファンティーヌは一夜のうちに十歳も老《ふ》けてしまっていた。
「まあ!」とマルグリットは言った。「お前さんどうしたの。」
「何でもないわ。」とファ
前へ
次へ
全639ページ中400ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング