ませんか。どうしてあんな奴をこの辺に放《ほう》っておくんでしょう。私《あたし》の前歯二本を抜けなんて、ほんとに恐ろしいわ。髪の毛ならまた生《は》えもしようが、歯はね。ああ畜生! そんなことするくらいなら、六階の上から真っ逆様に舗石《しきいし》の上に身を投げた方がいいわ。今晩ティヤック・ダルジャンの宿屋に待っていると言ったわ。」
「そしていくら出すと言いました。」とマルグリットは尋ねた。
「ナポレオン二つだって。」
「では四十フランですね。」
「ええ、四十フランになるのよ。」とファンティーヌは言った。
彼女は考え込んだ、そして仕事にかかった。やがて十五分もたつと、縫い物をやめて、階段の上へ行ってテナルディエの所からきた手紙をまた読んでみた。
室に帰ってから彼女は、そばで仕事をしていたマルグリットに言った。「何でしょう、粟粒疹熱《つぶはしか》ってあなた知っていて?」
「ええ、」と婆さんは答えた、「ひどい病気ですよ。」
「では薬がたくさんいるでしょうか。」
「そうですとも、大変な薬が。」
「どうしてそんな病気にかかるんでしょう。」
「すぐにとっつく病気ですよ。」
「では子供にもあるんです
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