始に神の霊水の上に漂いたりき」に傍点]」という句についての論があった。彼はこの句に三つの原文を対照さした。アラビヤの文には、「神の風吹きたりき[#「神の風吹きたりき」に傍点]」とあり、フラヴィウス・ヨセフスによれば、「いと高きより風地上に落ちきたりたりき[#「いと高きより風地上に落ちきたりたりき」に傍点]」であり、終わりにオンケロスのカルデア語の説明によれば、「神よりきたれる風水の面に吹きたりき[#「神よりきたれる風水の面に吹きたりき」に傍点]」であるというのだった。も一つの論においては、本書の作者の曾祖伯父《おおおじ》であるプトレマイスの司教ユーゴーの神学上の著述を調べて、十八世紀にバルレークールという匿名で公にされた種々の小冊子はこの司教に帰せなければならない、ということを彼は確かめている。
時としては、手にした書物が何であろうとその読書の最中に、彼は突然、深い瞑想に沈んだ。そしてその瞑想からさめると、いつも書物のページに数行したためるのであった。その数行は往々その書物に書いてあることと何の関係もないことがあった。ここに彼がある四折本の余白に書きつけた文句が一つある。その四折本の
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