敵同士を和解さしてやった。だれもみな彼を裁判官として奉じた、そしてそれも正当であった。彼は自然法則の書籍をもって心としているがようだった。あたかも伝染するがように彼に対する尊敬の念は、六、七年のうちにしだいにその地方全部に広まった。
しかるに、町や地方を通じて、その尊敬の感染を絶対に受けないものがただ一人いた。マドレーヌさんがいかなることをなそうとも、彼はいつもそれに敵意を持ち、あたかも一種の乱し動かすを得ない本能によってさまされ警《いまし》められてるがようだった。実際ある種の人のうちには、あらゆる本能と同じく一つの動物的で純で完全な真の本能がなお存しているらしい。その本能は反感や同感を起こさせ、一性格の者と他の性格の者とを全然分け隔て、また自ら少しも躊躇《ちゅうちょ》することなく、惑うことなく、黙することなく、自らを欺くことなく、自らの愚昧《ぐまい》のうちに揺るがず、知力のあらゆる勧告や理性のあらゆる訴えにも、決して撓《たわ》むことなく、厳として軟化せず、運命がいかなる状態にあろうとも、ひそかに犬人に戒むるに猫人の存在をもってし、狐人に戒むるに獅子人の存在をもってする。
マドレー
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