た。それは貞節の神秘な兆《しるし》で、バルバロッサをしてイコニオムの発掘の中に見い出されたディアナに恋せしめたところのものである。
 恋は過ちである。さもあらばこそ、ファンティーヌは過ちの上に浮かんでいる潔白そのものであった。

     四 トロミエス上機嫌《じょうきげん》にてスペインの歌を歌う

 その日は始めから終わりまでまるで曙《あけぼの》のようだった。自然もすべて休日で笑い楽しんでるように見えた。サン・クルーの花壇はかおりを散らし、セーヌの河風はそよそよと木の葉を揺るがし、木々の枝は風のままに動き、蜜蜂《みつばち》はジャスミンの花に集まり、蝶の群れはクローバーやのこぎり草や野生の燕麦《えんばく》の間を飛び回り、ロア・ド・フランスの壮大な園には鳥の浮浪の群れがいた。
 四組みの楽しい男女は、太陽や野や花や木にうち交じって光り輝いていた。
 そしてこの楽園の一群は、饒舌《しゃべ》り、歌い、かけ、踊り、蝶を追い、昼顔を摘み、高い草の中にその薔薇《ばら》色の透き編みの靴足袋をぬらし、生き生きとして、狂気のごとく、何らの意地悪げもなく、あちこちで皆互いに接吻《せっぷん》し合っていた。た
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