ううつ》が女の流行となり初め、女性の髪は悲しげに装うことが初まっていた。ゼフィーヌとダーリアとは捲《ま》き髪であった。リストリエとファムイュとは教師らのことを論じ合って、デルヴァンクール氏とブロンドー氏との違いを、ファンティーヌに説明してきかしていた。
ブラシュヴェルは、ファヴォリットのテルノー製の片方縁飾りのショールを日曜日ごとに腕にかけて持ち歩くために、特に天より創《つく》られたかの観があった。
トロミエスは後《あと》に続いて、その一群を支配していた。彼は大変快活だった。しかしだれも何かしら彼のうちに皆を支配する力のあるのを感じていた。彼の陽気さのうちには執政権が含まれていた。その重な身の飾りは、南京木綿《なんきんもめん》で象脚形に仕立てたズボンと、それについてる銅色の打ちひものズボン止めであった。手には二百フランもする丈夫な籐《とう》の杖を持っていた。そしてどんなことでもやってみるつもりだったので、口には葉巻き煙草というへんてこなものをくわえていた。彼にとっては何もありがたいというものはなかったので、彼はそれを平気でくゆらしていた。
「トロミエスは実にえらい。」と他の者らは尊
前へ
次へ
全639ページ中275ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング