レ・ミゼラブル
LES MISERABLES
改訳について
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)浩瀚《こうかん》な
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)年少|菲才《ひさい》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ]
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「レ・ミゼラブル」の翻訳を私が仕上げたのは、ずいぶん以前のことである。年少|菲才《ひさい》の身をもって事にあたったので、意に満たぬ点が多々あった。しかるに今度改訂の機会を得て、旧稿に手を入れてみた。
翻訳の仕事の難事であることは言うまでもない。ことに、自由奔放にペンを走らしたと思える「レ・ミゼラブル」のような浩瀚《こうかん》なものについては、種々の困難が伴なうものである。だが私としては相当の努力はしたつもりである。私がとくに意を用いたのは、原文の調子を、気分を、なるべく保存したいということであった。そのため、時には、荘重ではあっても拮屈《きっくつ》のきらいがあるかも知れない。それは余儀ないことであった。「レ・ミゼラブル」は、世間で往々想像されてるような卑俗な作品では
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