ひでり狐
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)一月《ひとつき》ばかり
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)結局|社殿《しゃでん》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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一
ある夏、大変なひでりがしました。一月《ひとつき》ばかりの間、雨は一粒も降らず、ぎらぎらした日が照って、川の水はかれ、畑の土はまっ白に乾《かわ》き、水田《みずた》まで乾いてひわれました。そして田畑の作物《さくもつ》はもとより草や木までも、萎《しな》びて枯《か》れかかりました。
田舎《いなか》の人達は心配でたまりませんでした。そのままでゆけば、田畑の作物はみなだめになって、秋の収穫は何もなくなります。困ったものだと、空ばかり眺めましたが、雲一つない青空にはいつも、暑い日が照ってるきりでした。
そこで、方々の村では、鎮守《ちんじゅ》の社《やしろ》に集まって雨乞《あまご》いをしました。御幣《ごへい》をたくさん立て、いろんなものを供《そな》えて、雨が降るようにと鎮守の神に祈りました。
そういう
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