つたけ》やしめじや……金茸《きんたけ》銀茸《ぎんたけ》などが、落葉や苔《こけ》の中から頭を出してるではございませんか。
「やあ、たくさんはえてる!」
皆は我を忘れて、林の中に駆け込んで、きのこを取り始めました。ところが不思議なことには、その一つを取ってしまうと、今まではえてたのはもちろんのこと、手に取ったきのこまでが、煙のように消えてなくなりました。
子供達はびっくりして、互《たが》いに顔を見合わせました。するうちに、ある一人がふと思い出しました。
「あ、しまった! ありがとうを忘れたからなくなったんだ」
なるほど、きのこを一つ取るごとにありがとうと言わなければならなかったのです。
子僕達は相談しました。お爺《じい》さんを呼び出して、謝った上で、またきのこをはやしてもらおうと考えました。それで、例の通りたき火をし、歌ったり踊ったりして、お爺さんが煙の中に出て来るのを待ちました。けれど、どうしたのか、お爺さんは出て来ませんでした。
子供達は悲しくなって、中にはもう涙ぐんでる者さえありました。すると、ある一人が言い出しました。
「お爺さんは怒ってるに違いないや。だけど、お爺さんは
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