、中の煙がふーっと出て来ました。皆はあわてて、破れ目を押えました。がもう間に合いませんでした。外に出た煙の中に笑い声がして、お爺《じい》さんの姿が現われました。
 お爺さんは、あっけにとられてる子供達を見下ろしながら、笑顔をして言いました。
「お前達はえらいことを考えついた。わしを袋の中へ入れてしまったな。だが、袋の横腹《よこっはら》を破ってのぞいたのがいけなかった。煙は上へ上へと昇るものだから、下からのぞくとよかったのだ。……それにしても、とにかくお前達はえらい。ごほうびに、明日から、この林の中にいっぱいきのこがはえるようにしてあげよう。ただ、それを取る時には、ありがとうと言わないと、きのこはみななくなってしまうから、よく覚えておくがよい」
 そして、お爺さんの姿は消えてしまいました。

      四

 子供達は、お爺さんを捕《つか》まえそこないましたけれど、きのこのことを考えると、うれしくてたまりませんでした。
 翌日になると、子供達は朝早くから起き上がって、皆誘い合わして、胸をどきつかせながら、林の所へやって来ました。するとどうでしょう。林の中一面に松茸《まつたけ》や初茸《は
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