筈《てはず》をきめました。
 そこで、その日はいつもよりたくさんに枯枝《かれえだ》や落葉《おちば》を拾ってきて、中には生木《なまき》の枝までも交えて、煙が多く出るようにしました。皆はそれに火をつけてから、歌をうたい踊りをおどりながら、煙の中をじっと横目で見つめていました。やがていつもの通り、山の方からさっと風が吹いてきて、濃い煙がゆらゆらと横倒しに動くとたん、アハハハハハという高笑いと一緒に、お爺《じい》さんの姿がはっきり煙の中に現われました。そらッ! というので、みんなは立ち止まって、中の一人が話しかけました。
「お爺さんはどこから来たの?」
 もう消えかけていたお爺さんの姿が、またにわかにはっきりしてきて、やさしい声で返事をしました。
「わしは山から来たのだ」
 すると、待ち構えた次の子供が言いました。
「お爺さん、煙の中から出て来てくれない? 一緒に遊ぼうよ」
「そうさね」とお爺さんはちょっと考えるようなきつい顔つきをしました。「いや、まあ止そうよ。わしは山の爺さんで、お前たちと一緒に遊ぶと、お前達が風邪《かぜ》をひくかも知れないのだ」
 すると今度は、三番目の子供が言いました。
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