悲しい声で鳴き立てましたが、もう森の精ではなくて鳥になっていますので、その意味は王子にわかりませんでした。
王子はぼんやり立っていられますと、どこからか矢車草《やぐるまそう》の花をつけた森の精が出て来まして、腕輪と黒い鳥の尾とを手にしていられる王子を、お城の中へ送り返してくれました。
その後、白樫《しらがし》の森はすっかり切り倒されて畑になり、城下には立派な町が出来ました。けれどもどうしたことか、月が毎晩|曇《くも》って少しも晴れませんでした。そして次のような唄が、城下の子供達の間にはやり出しました。
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お月様の中で、
尾《お》のない鳥が、
金の輪をくうわえて、
お、お、落ちますよ、
お、お、あぶないよ。
[#ここで字下げ終わり]
月の光りが少しもさしませんので、国中の田畑の物はよく成長しませんでした。草木が大きくなるには露と月の光りとが大切なのです。国中は貧乏になり、人々は陰気《いんき》になりました。それで王様も非常に困られて、位《くらい》を王子に譲《ゆず》られました。
王子は、白樫《しらがし》の森の跡に、木を植えさして小さな森を作られ、その中に宮を建て
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