たうちで、一番可愛らしく、しかも一番いたましい姿でした。メアリゴウルドの目鼻立や特徴はすべてそのままで、可愛らしい小さな靨《えくぼ》さえ、その金色の頤《あご》に残っていました。しかし、そっくりそのままに似てれば似てるほど、娘の残して行った形見のすべてともいうべきこの黄金像を眺める父の悲しみは大きいのでした。姫が可愛くてならない時にはいつでも、お前はお前の重さだけの金の値打があると言うのが、マイダスの好きなおきまり文句でした。そして今やその文句は、文字通りほんとうになってしまいました。そして遂にもう間に合わない今となって、彼は彼を愛してくれる暖い、やさしい心の方が、天地の間に積み上げることの出来る、どれほどの宝よりも、どんなに貴いか知れないということを、しみじみと感じたのでした。
 いよいよ彼の願いが十分に叶えられた時になって、彼が手を揉み絞って嘆き始めた有様や、メアリゴウルドを正視するにも忍びないし、それかといって彼女から目を離すことも出来なかった彼の心のうちなどを、一々述べていたら、随分と悲しい話になってしまうでしょう。とにかく、彼の目がその像に注《そそ》がれている時のほかは、彼はど
前へ 次へ
全307ページ中100ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング