て得たものよりも、彼の小さな姫の愛情の方が何千倍貴いか知れないと思いました。
『わしの大事な、大事なメアリゴウルドよ!』と彼は叫びました。
 しかしメアリゴウルドの返事はありませんでした。
 ああ、彼は何ということをしてしまったのでしょう! あの見知らぬ人が彼に与えた力は、何とおそろしいものだったのでしょう! マイダスの唇がメアリゴウルドの額に触れたその瞬間に、一つの変化が起ったのです。あんなに深い愛情に満ちていた彼女の可愛い、薔薇色の顔が、きらきらした金色に変り、頬を伝う涙さえそのまま黄色くかたまってしまいました。彼女の美しい鳶色《とびいろ》の巻毛も同じような色になりました。彼女のやわらかい小さなからだは、父の腕に抱かれたまま、固く、しゃちこばってしまいました。おう、何というおそろしい災難でしょう! 彼のきりのないお金に対する欲望の犠牲となって、小さなメアリゴウルドは、最早生きた子供ではなく、黄金の像になってしまったではありませんか!
 そうです、彼女はやさしく、悲しく、気の毒そうに、お父さまどうしたのとでも問いたげな表情のままで、顔が固まってしまったのでした。それはこれまで人間が見
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