のことでした。黄金の光に対するマイダスの迷い方と来ては、大変なものでしたので、朝飯のようなつまらないことのために、何でも金にする力を棒に振ってしまう気には、まだまだなれませんでした。そんなことでもしたら、一回分の食膳がどんなに高いものにつくか、まあ考えてもごらんなさい! 少しばかりの川鱒と卵と馬鈴薯とホットケイキとコーヒー一杯とに対して、何百万円も何百万円も、いやその上いつまで数えても数え切れないほどのお金を払うのと同じじゃありませんか?『それじゃ全く高すぎるわい、』とマイダスは思いました。
 それにしても、お腹《なか》のすき方はあまりひどいし、全くどうしていいやら分らないので、彼はまた大きな声で、その上たいへん悲しそうに唸りました。可愛いメアリゴウルドは、もうこの上辛抱は出来ませんでした。彼女はちょっとの間父を見つめたまま坐って、一生けんめい小さな頭を絞って、父がどうしたのかを知ろうと努めました。それから、父を慰めようとのやさしい、いじらしい気持から、椅子を立って、マイダスのところへ駆け寄り、かたく彼の膝にすがりつきました。彼は屈み込んで、姫に接吻しました。彼は何でも金にする力によっ
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